青色のキリンは空で笑う

日常の一コマをつらつらと

思いでの場所~くだらない話をばVol.2~

 

久しぶりにとある中華屋へ行った。

祖母が好きで、幼いころよく通っていたお店だ。

 

祖母が頼むのは決まってかた焼きそばだった。

 

トロトロのあんかけの上にぐるぐると酢をいっぱいかけ、

そして少しずつ麺をくずして食べるのだ。

 

幼いころの私はくるくると回る円卓でキャッキャと遊び

お腹いっぱい食べた後は決まって隣のコンビニでアイスを買って帰る。

 

祖母との思い出が詰まった中華屋。

 

祖母が亡くなった後、

母と二人でこっそりと訪れた。

 

母は、かた焼きそばを注文し、

やはりお酢をぐるぐると2周ほど回した。

そしてぽつりぽつりと昔の話をしながら静かに涙を流した。

 

それから私は、

5年以上この中華屋を訪れていなかった。

 

母が流した涙が、この中華屋の最後の想い出だった。

 

それなのに今日、

ふとまた入ってみたくなった。

食べたくなった。

 

頼むものは決まっていた。かた焼きそばだ。

にぎやかな店内の中で、私だけが静かだった。

私だけが、あの頃に戻っていた。

 

かた焼きそばが届き、酢をたっぷりかけて食べた。

 

祖母は、母は、幼いころの私は

笑顔で囲まれて、

こうやって笑って、食べていたんだよな

 

幸せだった。懐かしかった。

 

食べながら涙を流さなかった私を

数年前に亡くなった母はどう思うだろうか?

 

強くなったねと笑うだろうか、

それとも

ちょっぴり寂しいと笑うだろうか、

 

私は笑う。

かけなれていないせいで、

お酢を2周するどころか

かけ始めで酢の海にしてしまったよと、

私は私自身が愉快なせいで泣いている暇はありませんよと、

 

お酢をかけるのが下手すぎて

しんみりするどころではなかったが、

 

わたしはそんな愉快な自分を嫌いではない。

 

また近々食べに行こう。

今度は上手にぐるぐるとお酢をかけて食べよう。

 

思い出だった中華屋が息を吹き返した日。

おしまい。